「マイプライバシー」

 私には毎朝決まった時間に起床するという習慣はない。あと五分、あと三分と言いながら、限界ぎりぎりまで寝ていることが多い。
 したがって、朝めしは食べない。コーヒーを飲みながら新聞に目を通すのが楽しみだがそのコーヒーを湧かすのさえおっくうなことが多い。新聞は地方紙二紙、全国紙一紙と日経新聞をとっている。
 そして、その他に英字新聞をとっている。しかし、この英字新聞はこの十年間一度も開いたことがない。


 しかし、実際に起こるかどうかは別として、何時か英語をマスターしようと思いたったその日に、この新聞がなかったら、おそらくその意欲を瞬時に失ってしまうだろう。膨大な無駄と贅沢を今日まで続けている。
 新聞はまずスポーツ欄から見る。それも阪神タイガースの試合結果を見る。阪神が負けていれば機嫌は良くない。したがって、シーズン中、半分以上は機嫌が悪い。


 最後に目を通すのは日経新聞である。読まなければならない記事が多すぎて、大抵は読まずにためておく。十日分ぐらいたまってから、読みたいページを破り取って持ち歩き、一枚ずつ読んでは、捨てていく。まことにしんどい習慣である。


 私は、早飯喰いでは人後に落ちたことがない。これが私の唯一の自慢であり、自信の源であった。しかし、ある日その誇りがもろくも崩れ去るときがやってきた。常任委員会の県外視察の時だった。私たちは昼めしを喰っていた。私が喰い終わって、箸をおいたその時か、あるいはその一瞬前かに私の目の前で静かに箸を置く人物がいた。何事が起こったのか、最初は信じられなかった。心を落ち着けて、静かにその人の顔を見た。その人は・・・・・。


 よくよく考えてみれば、私には、人に自慢できるような重大なプライバシーは、今のところないようだ。
 がしかし、一方でプライバシーは人生最高の調味料のようでもある。そして、人の活力の源は案外そんなところにあるのだろうか。精進したい。