「アメリカ ザ ビューティフル」

 これは決して私が、突然アメリカかぶれになったせいではない。この表題は古くから歌われ続けたアメリカのフォークソングからとったものである。


 しかし、このたびのテロ事件でアメリカ国家より頻繁に歌われ、アメリカ人の心を慰めた歌は他にないであろうと思う。この歌を歌いながら、多くのアメリカ人が涙し、愛国心をかきたてたのである。
 日本では国歌について、まだ心が定まっていない。「君が代」の「君」は国民を指しているというなら、早くはっきりさせるべきだ。
 しかし、たとえそうなったとしても、これからの若い人達がいつも国を思いながら気軽に、しかも自主的に歌う歌は欠かせないだろう。


 ノーベル賞作家・川端康成の授賞式での講演は「美しき日本と私」であった。日本は世界に類のない「美しい国」である。
 テロ事件後もアメリカに滞在している。そのアメリカはようやく落ち着きを取り戻した。アフガニスタンとの戦争など、国民はまったく望んではいなかった。

 それにしても日本の対応はどうだろう。フランスのシラク大統領は追悼式の前に、ニューヨークで英語で演説をした。イギリスのブレア首相はアメリカ議会に出席し、鳴り止まらぬ拍手の中で、最大級の賛辞を浴びた。


 日本大使館は、はたしてその役割を果たしているのだろうか。小泉首相を追悼式に出席させるくらいの知恵はなかったのだろうか。土産を何にするか考える前に、まず飛んで行くのが友情というものだろう。
 先日、国立健康研究所に招かれて視察に出かけた。1マイル四方に50以上の施設が集積している。それは驚くに値しない。
 しかし、中に入れば100人のノーベル学者の写真が待ちかまえている。その中に利根川博士がいた。16000人の研究者のうち、半分は医師、その他は医学以外の博士で構成されている。日本人研究者は400人に及ぶという。


 金沢大学医学部、分子生物の東田教授は、まとまった休暇の取れるときはいつもここで研究を積んでいる。立派な人がいる。
 ひるがえって日本の学問の府は、治外法権と称して閉鎖社会の中で意欲を失っている。
 一日も早く開かれた組織へと脱却しなければ、この方面も含めて日本の将来はないだろう。